第56章

夕理は踵を返し、病室へと戻った。だが、そこはもぬけの殻だった。慌てて司の病室にも向かったが、彼の姿はなく、アシスタントの建すら見当たらない。

怒りで頭が沸騰しそうだった。夕理は血相を変えてナースステーションへと向かった。

鬼の形相で近づいてくる彼女を見て、看護師たちは厄介なクレーマーではないかと身構えた。

夕理はカウンターをバンッと強く叩き、横柄な態度で問い詰めた。

「2301号室の患者はどこへ行ったの!」

看護師たちは顔を見合わせ、困惑した。

「患者様の個人的な行き先までは、私どもでは把握しておりませんが……」

そんな説明で納得する夕理ではない。彼女が手当たり次第に喚き散らし...

ログインして続きを読む