第6章

九条家の当主、九条司(くじょう つかさ)。

琴音の瞳が微かに揺れ、記憶が怒涛のように脳裏へ押し寄せてきた。

とうの昔に意図して忘れ去ったはずの名前が、再び目の前に浮かび上がる。

彼女の幼なじみ、司。

梨乃は早くから彼女の異変に気づいていた。その視線の先を追い、すぐにすべてを察する。

そして、声を潜めて説明した。

「九条さん、先月帰国したばかりなの。噂じゃ、彼女を探しに戻ってきたって」

その『彼女』とは、当然、彼にとっての高嶺の花だ。

琴音はすぐに我に返ったが、彼がとうに視線を外していることに気づく。

彼女は気に留める様子もなく、淡々とした口調で言った。

「最初から最後まで...

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