第2章
彼は時間より早く着いていた。
午前九時五十五分。川端海斗はもう厩舎の入り口で待っていた。彼は居心地が悪そうに足を踏み替え、自分がここにいていいものか確信が持てない、といった様子で緊張しているように見えた。
いいだろう。緊張しているのは、この話を真剣に受け止めている証拠だ。
私が車椅子を彼の方へ進めると、その音に気づいて彼が振り向いた。
いた。
写真で見たあの緑の瞳。だが、実物はもっと鋭い。もっと用心深い。私が彼を吟味しているのと同じくらい、彼もまた注意深く私を観察していた。
ただの緑ではない。夏の湖水を思わせる深い色だ。澄んでいて、知的。彼が私を見つめるとき――ほとんどの人間が気にも留めないような、もっと多くのものを見ているような気がした。
「藤井さん?」
想像していたより低い声だった。丁寧だが、卑屈さはない。
「時間厳守だな」と私は言った。
「そういうのは好きだ」
彼の唇にかすかな笑みが浮かんだ。
「祖母がいつも言っていました。遅刻は無礼の一種だと」
祖母か。そうだった。癌を患っているという。
「葉山さんがすぐに来て、正式な紹介をするはずだ」
まるで呼び出されたかのように、葉山理人が母屋の方から現れた。その動きはいつものように効率的だったが、彼の目が素早く川端海斗を値踏みしたのを私は見逃さなかった。軍隊時代からの古い癖だ。
「川端海斗さん、ご紹介します。藤井丸幸さんです」
川端海斗が一歩前に進み、手を差し出した。
「お会いできて光栄です、藤井さん」
私は彼の手を握り、その手のひらにあるたこに気づいた。働き者の手だ。正直な手だ。
「来てくれて感謝する」
私は葉山理人に目をやった。
「今はそれだけでいい」
葉山理人はうなずくと、再び母屋の方へと姿を消し、私たちだけが残された。
川端海斗は、明らかに感心した様子で厩舎を見回した。
「ここはすごいですね。こんな場所は見たことがありません」
その声に宿る誇らしさに、私の胸の中で何かが温かくほどけていくのを感じた。ほとんどの人間は、藤井牧場を当然のものとして受け止める。我々の名声ゆえに、すごいのが当たり前だと思っている。
「一緒に来てくれ」
私は厩舎の奥へと車椅子を進めながら言った。
「教えてくれ、川端海斗。君は馬について何を知っている?」
「乗ることについてはあまり」
彼は私の車椅子の隣に並んで歩きながら認めた。
「ですが、若い頃に少し世話を手伝ったことがあります。近所の人が農作業用に荷役馬を飼っていたんです」
正直だ。それも気に入った。
「それで、今日はどういうご用件で?葉山さんからは詳しい話は伺っていなくて」
川端海斗が歩みを止めた。私が見上げると、彼はわずかに眉をひそめていた。困惑しているのとは違う。どちらかというと、パズルを解いているような顔つきだ。
聡明だ。非常にいい。
「正直なところ、藤井さん、僕自身もよく分かっていないんです。あなたの方から提案がある、とだけ」
「ある」
私は馬房の列を指し示した。
「共に馬に乗る相手が必要なんだ」
「練習相手、ですか?」
「私がきちんと訓練できる相手だ。ただ基本的な命令に従うだけでなく、私と息を合わせることを学べる人間が」
彼の眉間のしわが深くなった。
「ですが、それならもうそういう方はいらっしゃるのでは?プロの調教師とか、他の騎手とか……」
「プロは欲しくない」
私はきっぱりと言った。
「私が欲しいのは、ゼロから信頼を築くことの意味を理解している人間だ」
私たちは最初の馬房にたどり着いた。中では、美しい栗毛の牝馬が顔を上げ、優しく鼻を鳴らした。
「ダッチェスだ」
私は言った。
「おとなしいが、誇り高い。新しい人間に慣れるまで時間がかかるんだ」
川端海斗が馬房の扉に近づく。ダッチェスは興味深そうに耳をぴんと立て、一歩前に出た。
「美しい……」
彼は声を低く、安定させたまま言った。彼が柵に手を伸ばすと、ダッチェスはすぐにそれを確かめに近寄ってきた。ビロードのような鼻先が彼の手のひらに触れ、すぐに離れた。
面白い。
「気に入ったようだな」
私は次の馬房へ移動した。
「こいつはサンダー。もっと気性が荒い」
黒い去勢馬は頭を振っていなないたが、川端海斗が近づいても離れようとはしなかった。むしろ、好奇心をそそられているようだった。
「そして、こちらが」
私は一番大きな馬房の前で止まり、言った。
「テンペストだ」
中にいた種馬は壮麗だった。石炭のように黒い体に、顔には白い流星。体高十六手の、純粋な力と優雅さの塊だ。ほとんどの人間が五年かけて稼ぐよりも高価な馬だった。
川端海斗はぴたりと動きを止めた。「なんてことだ……」
テンペストが前に進み出て、この新しい人間を明らかな知性をもって観察した。そして、私が息をのむような行動をとった。
テンペストが、いなないたのだ。柔らかく、歓迎するように。
見知らぬ人間にそんなことをしたのは、今まで一度もなかった。
「彼は……」
川端海斗は言いかけて、言葉を止めた。
「言葉が見つかりません」
「君のものだ」と、私は自分の声が言うのを聞いた。
「もし、私の提案を受け入れるなら」
川端海斗は振り向いて私を凝視した。
「すみません、何と?」
「君に乗り方を教えたい。本格的に。ただの基本的な技術じゃない、本当のパートナーシップを。築くのに何ヶ月もかかるようなものを」
「藤井さん、そんなものを受け取るわけにはいきません。この馬はきっと……」
「君がこれから十年で稼ぐより価値がある」
私は彼の言葉を継いだ。
「分かっている。問題はそこじゃない」
「では、何が問題なのですか?」
いい質問だ。私は、家よりも高価な馬たちに囲まれ、履き古したジーンズと色あせたシャツでそこに立つ彼を見た。だが彼は、気圧されるどころか……好奇心に満ちた、思慮深い顔つきをしていた。
まさに私が望んでいたものだ。
「問題は、私が退屈しているということだ」
私は簡潔に言った。
「私はこれまでずっと、私から何かを欲しがる人間に囲まれて生きてきた。金、コネ、地位。君は違う」
「どうしてそれが分かるんですか?」
「ただ『はい』と言う代わりに、的確な質問をしているからだ」
彼は長い間黙り込み、私が口にしていないことを見つけ出そうとするかのように、私の顔をじっと見つめていた。
「そのパートナーシップというのは、具体的に何をするんですか?」
「トレーニングだ。週に数回。馬のボディランゲージの読み方、触れ合いと動きによるコミュニケーションの取り方、ただの乗り手と乗り物ではなく、パートナーとなるための信頼の築き方――すべてを教える」
「その見返りは?」
「見返りは、私が教えようとしていることを本当に理解してくれるかもしれない人間と、共に取り組めることだ」
再び長い沈黙が流れた。テンペストは馬房の前に移動し、明らかに興味深そうに私たちの会話を見守っていた。
「馬に乗ったことすらないんです」と、川端海斗はついに言った。
「結構だ」
私は答えた。
「直すべき悪い癖もない」
だが、私が喜んだ本当の理由はそれではない。本当の理由はもっと単純だった。
彼が学ぶ姿を見たかった。彼が何か新しいことを発見するところを見たかった。そして、それを教えるのが私でありたかったのだ。
その考えは私を不安にさせるべきだったかもしれない。だがそれどころか、ここ数ヶ月で感じたことのないほど、自分が生きているという実感を与えてくれた。
「藤井さん」
彼はゆっくりと言った。
「あなたは私に、一体何を求めているんですか?」
私は微笑んだ。それは、ここ数週間で初めて見せた、心からの笑顔のような気がした。
「明日の午後。三時だ。最初のレッスンを始める」
