第9章
それは、やみくもな一撃ではなかった。正確無比な、抑制の効いた一撃が、武田拓也の体をコーヒーテーブルへと叩きつける。ガラスが砕け散る音と、荻尾伊のすすり泣きが混じり合う。
「動くな」
川端海斗はそう警告し、荻尾伊をその身で庇うように動いた。
武田拓也は鼻から血を流しながら、よろめきつつ立ち上がった。
「小僧、自分が誰を相手にしているのか、わかってないようだな」
「ああ、わかってるさ。子供を食い物にする、哀れな酔っぱらいだろ」
武田拓也が飛びかかってきたが、今度は私に準備ができていた。
「葉山さん」
長年私を守ってくれた人が部屋に入ってくると、武田拓也は突如、軍隊に二十...
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