第121章-隠れた敵

「ごめんなさい」

彼女はようやくそう口にした。だが、そこには悔いの色など一片もない。むしろ、一見して深い海を思わせるその瞳には、どこか焦れたような熱が宿っていた。視線が彼の唇へ吸い寄せられ、そしてまた彼の目へと戻ってくる。

彼が支えにしていた手を外し、次の仕草として指を彼女の顎の下へ滑り込ませた瞬間、彼女は一瞬だけ目を閉じた。彼は眉をひそめる。

「その手袋、外してくれたらいいのに」彼女はつぶやき、目を開いた。ずるいほど挑発的な笑みが唇に浮かぶ。

今夜の彼は、彼女の小さなからかいに付き合う気分ではなかった。彼女のほうは、その気で満ちているらしいが。結末はわかっている。痛みを伴う拒絶がまた...

ログインして続きを読む