第86話鏡、壁の鏡

彼の手袋をはめた手は彼女の手から離れず、快楽が襲ってきても、彼は彼女に目を閉じさせなかった。

「目をそらすな。これを見て、永遠に覚えておけ。鏡を見ろ」

イグナスよ。

この鏡……。

初めてこの鏡を目にしたとき、こんな使われ方をするなんて、彼女は夢にも思っていなかった。

まるで運命そのものが、この瞬間をあらゆる形で彼女の記憶に焼きつけようとしているみたいだった。これから先ずっと忘れられないように――彼女が敗れた、その瞬間を。

彼女の指は濡れた秘所へ沈み込み、親指はそこを擦った。動きは速い。本当は彼の手でしてほしかった。けれどエリは罪悪感を手袋のようにまとい、長く渇望してきた欲望から、自...

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