第94章-静かな別れ

世界が止まった。

彼女の世界が。

静かすぎるのに、同時にうるさすぎた。耳をつんざくほどで、彼女はただ痺れてしまう。

短剣を伝ってこぼれ落ちた温かな液体が、滴となって掌に落ちるのがわかった。

エリの瞳に涙が滲み、彼は微笑んだ。そして彼女の手を短剣からそっと外し、自分の首飾りへと導く。

木のペンダントの硬さが、彼女に何かを感じさせた。

すべてを感じさせた。

速すぎる、重すぎる。

涙が頬をつたい、震える唇から囁きが漏れる。「いや……」

心臓が速すぎるほどに脈打っていた。短剣を見て、すぐに彼を見上げる。抜いたら、もっと悪くなるんじゃないの――!?

どうすればいいの!?

イグナスよ...

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