第8章-一歩近づいた

ニカは剣の柄を握る手に力を込め、鋭く睨みつけた。前へ踏み出そうとしたそのとき、誰かが剣を彼女の足もとへ放り投げた。

「救世主だ」

男はそう言って、その場に膝をついた。

「お父様?」ニカは呆然としてその男を見た。「何を――」

「失われし玉座の継承者!」男は頭を垂れた。「ついに……」

次々と人々が剣を地に投げ捨て、やがて洞窟の空気は「救世主」という唱和で満ちていった。ニカは険しい顔のまま剣を鞘に収め、くるりと背を向けた。

ほかの者たちは、この「救世主」とやらの言葉を信じるほど愚かで、そして追い詰められているのかもしれない。だが、彼女は違った。あの男には、どうしても心を落ち着かなくさせる...

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