55-この世界には平和はない!

「私が自分で噛んでやらなきゃいけないの、それとも――」

その言葉の途中で、彼の手が彼女の首にすべり込み、血の中で火花が解き放たれた瞬間、声は喉の奥に吸い込まれて消えた。驚愕に口を半開きにしたままの彼女に、彼は目を暗く沈ませて身を寄せる。犬歯で下唇の一部を切り裂き、彼女のヴェールを引きはがした。瞬きをする暇も、抗議する暇も与えず、彼はその唇を彼女の唇に押しつけた。

彼女の手は彼の胸をつたい、そのまま首に回ろうとした。だが彼はそれを引きはがし、両手首を頭上で封じるように押さえつけながら、彼女の背をソファへ沈めていく。血の中を暴れ回る感情はあまりに圧倒的で、痛みすらまともに感じられない。

長い...

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