第59章-欲望

素敵な名前だ。

彼は、彼女がその名を口にした響きがうれしくて、唇の端をそっと持ち上げた。

彼女の唇にのると、それはただただ完璧に聞こえた。耳に落ちてくる声は蜜のようで、甘く、絡みつく。

そして彼の唇が、羽毛が触れるほどの軽さで彼女の唇をかすめた。だがすぐにわずかに身を引き、代わりに腕の力を少し荒く強める。急な動きに彼女は息を呑んだ。そのときになってようやく、どれほど長く膝をついていたかに気づく。体勢を崩し、ぶつかるようにして王に身を預けた瞬間、彼は額を彼女の額へと押し当てた。触れたまま――目を閉じて。呼吸は重く。抑え込むのが、難しい。

「ドンナ。俺のドンナ」

彼女はバランスを取り戻そ...

ログインして続きを読む