第6章-花嫁候補を授けよう

誰もが即座に膝をつき、深く頭を垂れた。

ベラドンナは少々ぎこちなかったものの、どうにか自分に注意を向けさせずに済んだ。

「面を上げよ」

ドラゴン王が命じた。その声は低く、抗いがたい威厳を帯びていた。たとえ逆らう度胸があったとしても、無視などできない種類の権威だった。実際、指先をひとつ動かすだけでも、力そのものが響き渡るようだった。

人々は立ち上がった。

「座れ」

皆、従った。

それからドラゴン王は〈候補者〉の区画へと歩き出し、先ほど先着していた女がその後ろに続いた。

ベラドンナは素早く視線を地面へ落とし、身を守るように両腕で自分を抱いた。やがて、二人がちょうど自分たちの前で足を止める気配がした。

「始めよ」

ドラゴン王は、後ろに控えていた女へそう言った。

女は一歩前へ出ると、長椅子のあいだを進みながら、一人ひとりの娘たちへ視線を走らせた。

「立って」

そう命じる声は、王の到着を告げていたときとは違い、きっぱりとしていながらもどこか艶を含んでいた。

指名された娘はゆっくりと立ち上がった。その全身からは、恐怖があふれ出しそうになっていた。

「あちらへ」

女は、少し離れた場所に立つ衛兵たちのほうを手で示した。

ありがたいことに、そこはドラゴンのいる場所からはかなり離れていた。

けれど、それで何かがましになるわけではなかった。村人たちは明らかにあの獣を恐れていたし、その主を恐れるのとまったく同じだった。

選定は延々と続いた。女が花嫁候補を選び、娘たちは立ち上がって、すでに選ばれた者たちの列へ加わっていく。本当は抗いたくてたまらないはずなのに、誰も抵抗せず、自らの破滅を受け入れていた。

ある者は家族のほうを振り返り、声なき別れを告げた。ある者は涙で視界が曇り、顔を上げることすらできなかった。

ここまでは、ベラドンナの決めたルールはうまく働いていた。少なくとも、まだ彼女は長椅子に座ったままで、選ばれてはいない。

ついに七人目の候補花嫁を選ぶ番が来た。ベラドンナは、これが早く終わってくれることを願っていた。そうすれば部屋へ戻ってベッドに横になり、この数日のあいだに自分の運命がどれほど急激に変わってしまったのか、そして次に何をすべきかを考えられる。

感情はいまだにこんがらがったままで、自分でも整理がついていなかった。ちゃんとわかればいいのに、と彼女は思った。せめて吐き出す先があって、自分が何を感じているのか理解できて、それに正しく反応できるなら、きっと前へ進めるはずだった。

まるで宙に浮いているようなこの感覚も、終わるはずだと信じていた。

女のかかとが床を打つ、かつかつという音が、彼女を思考から引き戻した。

ベラドンナは凍りついた。近づいてくる。

まさか、自分のほうへ……!?

いや、そんな――。

彼女は慌ててさらに身を縮めた。もっとも、この体勢のせいで、もう背中はひどく痛んでいた。

それでも、選ばれるよりはましだ。

ただ、右隣に座っていた娘が少し震え始めていた。娘は手を伸ばし、ベラドンナの手をぎゅっとつかんだ。ベラドンナはとっさに振りほどこうとしたが、相手の握力は強すぎた。

まるで、それだけが命綱であるかのようにしがみついている。

何なの、この狂気は。

目の端から、ベラドンナはその娘をきっと睨みつけた。正気とは思えない行動の理由を問いただすように。

顔も知らない相手なのに。

だが、そのときベラドンナは気づいた。娘の目は固く閉じられ、唇は細かく震えている。何かをものすごい速さでぶつぶつと唱えていた。

ベラドンナには、それが「お願い」に近い言葉のように聞き取れたが、自信はなかった。

そのつぶやきが、不意に止まった。身体もぴたりと静まる。なぜなのかわからなかったが、次の瞬間、長く赤く磨かれた爪を持つ細い二本の指が、娘の顎の下へすっと差し入れられるのが見えた。

ベラドンナは手を引っ込めようとしたが、娘の握りはまだ強すぎた。

さっきからこの娘の様子に気を取られ、先ほどまで意識していた選定役の女のかかとの音に注意を払うのをやめていた。なんとも間抜けな失態だった。

しかも、この娘は本気で自分を巻き添えにしたいらしい。まだ手を放そうとしない。

いったいどれほど正気を失えばこんな真似ができるの!?

「立って」

「いや……」

娘がかすかに息を呑むのが聞こえた。だが、それでも彼女は立ち上がり、ようやくベラドンナの手を放して、そのまま歩いていった。

ベラドンナは深く息を吸い、安堵のため息をついた。

モリア・ナクンリヴァーの本を、あまりにも早く見切りつけすぎたのかもしれない。

「候補花嫁は選び終えました」

女はそう告げると、選定の終わりにいつも述べるらしい決まり文句を語り始めた。

ベラドンナは、そんなものに興味などまるでなかった。おもしろかろうが、つまらなかろうが、どうでもよかった。

もう危機は去ったと確信し、ベラドンナは選ばれた娘たちのほうを見上げた。もっとも、背はなお丸めたままで、自分を小さく見せ、白一色の海の中に溶けてしまいそうなほど目立たぬようにしていた。

用心に越したことはない。

そのとき、彼女はあることに気づいた。

さっきまで自分の手を握っていた娘の目は、引き裂かれそうな恐怖で満ちていた。だが、それ自体は珍しくもない。選ばれた女たちはみな同じように怯えていた。ただ一つ違っていたのは、その娘が家族のいるほうを見上げて、首を横に振っていたことだった。そしてその唇は、今もなお細かく震えていた。

どういうこと……?

すると、あの女が鋭く周囲を見回しているのに気づいた。何かを探しているように。

出口――!

嫌だ、まさか。

ベラドンナの心臓がひゅっと跳ねた。

愚かな考えだ。

こんな状況で逃げおおせるはずがない。捕まらずに済む道理がない。逃げたくなる気持ちを責めることもできないが、ベラドンナには、運命を受け入れさえすればまだ引き返せる望みがあるように思えた。戻れるかもしれない六人の「候補の花嫁」に選ばれたこと自体、運がいいのだ。だが今ここで逃げれば、竜王は過去に多くの者へしてきたのと同じことを、彼女にもするだろう。

――いや、もっとひどいことをするかもしれない。誰もこれほど露骨に挑んだ者はいなかったのだから。

走っても何も解決しない。確かなのは、事態を悪化させるだけだということ。

彼女だって、それくらい分かっているはずだ。

女の石のように怯えた目がベラドンナに流れ、ベラドンナは小さく首を振った。

顔色は灰のように青ざめ、額から汗が玉になって流れ落ちている。胸ははっきりと上下し、全身がかすかに震えていた。

そしてふいに、ほんの一瞬だけ動きが止まった。絶え間なく続いていた女の早口さえ、周囲の物音も、すべてが遠のいていく。

その一瞬、世界には二人しかいないかのようだった。ベラドンナと、あの女だけ。

ベラドンナはもう一度首を振る。「やめて」唇だけでそう告げた。

涙が頬を伝い落ち、女は駆け出した。

「だめ!」ベラドンナは反射的によろめきながら立ち上がった。

騒ぎは一瞬だった。戦士の一人が女を捕まえ、まるで羽根のように肩に担ぎ上げる。女は必死に暴れ、背中を叩き、腹を蹴り、命が懸かっているかのように逃れようとした。

「いや!」胸をえぐるような痛みを声に乗せて叫ぶ。「お願い、別の人に!わたしじゃない!別の人を!」

叫びは夜気を切り裂き、女の目はなお家族に縫い付けられていた。

ベラドンナはその視線の先を追った。

家族はすぐに見つかった。かなり上の方にいたが、松明の灯りのおかげで見えたのだ。年老いた男がいて、膝の上に小さな男の子を二人乗せている。子どもたちは男の肩に顔をうずめてすすり泣き、男は前を見据えたまま、きつく腕を回していた。

衛兵が女を地面に放り投げ、女は王の前で膝から崩れ落ちた。王が問いただすより早く、女は身体を折り、床へ吐いた。

群衆が息をのむ。ざわめきが広がり、ついに誰かが叫んだ。

「妊娠してる!」

その瞬間、老人は二人の息子を抱えたまま跳ね起き、走り出した。

だが遠くまでは行けない。戦士たちが老人と子どもをすぐに取り押さえ、王のもとへ引きずっていった。

家族全員が、王の前にひざまずく。

竜王は悠然と仮面を指で叩きながら、見下ろした。

「我が竜の次の餌か?」冷えた声で言った。

竜の目がきらりと持ち上がった。王は離れた場所に立ち、声も特別大きくはなかったのに、言葉を一つ残らず聞き取り理解したかのようだった。

竜は低く唸った。

再び、ベラドンナはあの振動を足元に感じた。

竜は一歩、家族へ向かって踏み出す。捕食者の目。尾がゆっくりと揺れる。

家族は恐怖ににじり寄って後ずさりし、涙を流しながら助けを乞うた。周囲の村人たちは緊張で固まり、無力のまま席に縫い付けられ、怯えた目で見守ることしかできない。

王が手を上げると、竜はその場でぴたりと止まった。

「ここではない。今でもない」王が言うと、竜は数歩退き、元いた場所へ戻った。

それから王は衛兵に合図し、衛兵たちは家族を引き起こして引きずっていった。抵抗し、懇願し続ける彼らに手を差し伸べる者は誰もいない。

王は竜へ歩み寄った。

「立っている者を七人目にしろ。城で会う」そう告げると、王は竜の背に飛び乗った。

大きな羽ばたきの轟音が起こり、二つの影は上昇していく。ベラドンナが目を逸らしたのは、それが空の点になるほど遠ざかった頃だった。

それから振り返ると、あの女が再びこちらを見ていた。

――王が求めたのは、「立っている者」。

ベラドンナは混乱して辺りを見回し、探した。

この瞬間に立っているなんて、よほど愚かだ。儀式は終わったも同然なのに、わざわざ目立つような真似をするなんて。

あからさまな自己主張――「わたしを選んで」とでも言わんばかりの行為だ。

自分であるはずがない。自分はそんなに愚かじゃない。

「王族のお迎えでも待ってるの?」

女が顔をしかめて言った。その矛先は……ベラドンナ?

なぜ自分に?

ベラドンナは慌てて足元を見下ろした。

自分が……?

そこで思考が途切れ、背筋を冷たいものが走った。

立っていたのは、自分だった。

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