第98話廊下のささやき

ほっそりした手が半ば裸の背をぽんぽんと撫でた。だがベラドンナは、圧倒するほど穏やかな抱擁の中でなお身体を強張らせたままだった。

これは――まだ幻なのか?

扉が押し開かれた。しかし顔をレディ・ケストラの肩に埋められていて、何も見えない。出てきたのは花嫁だろうか、とベラドンナは思い、抱擁を振りほどくようにもがいて身を引いた。そうして見えたのはコリンだった。彼がラケルを連れて部屋から出てくるところだった。

これも――まだ夢なのか?

どうして、こんな奇妙なことばかり起こるのだろう。

けれど空気の中に、妙な気配が漂っているのを感じた。疑わしいほどに、落ち着きを与える気配。

落ち着きすぎている...

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