第10章
シリア国境の土地は、雨季を終えてぬかるんでいた。
私はひときわ高くそびえるオリーブの樹の下に跪き、爪の間に土と血を詰め込んでいた。
三時間前、一本の金属プレートが樹冠から私の肩に落ちてきた。
そこに『星野海斗』と刻まれているのを見た時、心臓がほとんど止まりかけた。
この樹は周囲の植物とはまったく違っていた——より高く、葉は墨のような緑色で、根元の土は黒ずんでいる。まるで何か特別な養分で育まれているかのようだった。
「海斗……」
私は震える手でプレートを撫でた。
「ここに、いるの?」
掘り進める作業は、さながら修行のようだった。
シャベルで土を掻き出すたびに、...
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