第5章

美咲視点

赤い線が、二本。

手の中の妊娠検査薬を見つめていると、世界が凍りついたように感じた。

『うそ、どうして……私が、どうして……くそ.......』

震える指から検査薬が滑り落ちる。寝室のベッドの端に崩れ落ちると、全身の血が凍りつくような感覚に襲われた。

この二ヶ月、体の変化を全部ストレスのせいにしていた。吐き気、倦怠感、コーヒーが受け付けないこと……あらゆる症状を、自分の心の混乱のせいだと思い込んでいたのだ。

正雄はこの二ヶ月、出張で家を空けていた。あの倉庫部屋での一夜の後……彼は桜西の仕事だと言い残し、すぐに行ってしまった。別れの言葉は、「戻ったら話そう」とい...

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