第31章 お前は法を犯しているぞ

電話の向こうで、松本淳太の声が鋭く跳ね上がった。

「心海? 何言ってるんだ。心海?」

もう、答える力は残っていなかった。

そのとき、藤井愛美の声が個室の入口から聞こえたからだ。

「ここは見た?」

「まだです」

「じゃあ、確認して」

心海は慌てて通話を切った。

助けを求められた――その事実だけで、張りつめきっていた神経がびくりと震え、わずかに力が戻る。彼女は床に手をついて必死に身体を起こし、スマホをズボンのポケットへねじ込んだ。そのままソファと壁のあいだにできた影へ、するりと身を押し込む。小さく、小さく丸まって、両手で口を塞ぐ。手の甲を歯で噛み、どんな音も漏らすまいと息を殺した...

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