第33章 君が言って、僕は聞いている

個室を出て、廊下を抜け、バーロビーへ。

カウンターの前を通りかかった瞬間、心海はぼんやりと目を開けた。

霞んだ視界の中でも、藤井愛美がまだそこにいるのがわかった。カウンター脇に立ち、左頬を押さえている。

目元は真っ赤で、頬には涙の筋。マスカラは溶けて下まぶたに黒い跡を二本引き、ひどくみじめな姿だった。

そして、その向かい側には——酒井蒼真。

いつ来たのか、昼間と同じ服のまま。髪も少し乱れていて、慌てて駆けつけたように見える。藤井愛美を見る目は冷たく、まるで赤の他人でも眺めるみたいだった。

心海には、もう考える力が残っていない。緊張がほどけた途端、瞼が勝手に落ちていく。吐き気のする...

ログインして続きを読む