第34章 昔の出来事

心海は深く息を吸い込んだ。まるで、どこかに置き忘れてきた力を胸の奥からかき集めるみたいに。

それから、静かに語り始める。

「私が藤井家の実の娘じゃないこと、知ってますよね。病院中……たぶん、みんな知ってる」

松本淳太は小さくうなずいた。もちろんだ。

院内で心海にまつわる噂が途切れたことはない。養子だとか、藤井家の使用人の子だとか、取り違えだとか。どれも決め手のない話ばかりで、誰も確かめようとしなかった。心海自身が一度も口にしなかったからだ。

「でも先輩、私がどうやって『実の子じゃない』って知ったのかは……知らないかもしれない」

心海の声は淡々としていた。視線は窓辺のポトスに落ちた...

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