第35章 無条件の愛

心海の声が、ようやく少しだけ詰まった。

「……私が、お母さんに似てるって。若い頃の母と、そっくりだって言ったの。――この先の人生、私にも、私の本当の母にも、申し訳ないことをしたって」

「それからね……すごく優しくしてくれた。本当に、優しかった。藤井家みたいに物に恵まれてはいなかったけど……ちゃんと、手触りのある愛をくれたの」

その瞬間、彼女の声はふっと柔らかくなる。

それは脆さではない。きちんと愛された人だけが持てる、愛が編んだ盾みたいな柔らかさだった。

「藤井家の『言うことを聞いて、優秀でいなさい』っていう優しさじゃないの。『何があっても、愛してる』っていう優しさ。麺を茹でてくれ...

ログインして続きを読む