第39章 どうして姉ちゃんを待ってくれないの?

酒井蒼真は黒のオーダーメイドスーツに白いシャツ、蝶ネクタイまで寸分の乱れもない。照明を受けた横顔は彫りがいっそう深く、眉間にはどこか冷めた気配が残っていて、喜びらしい色はあまり見えなかった。

落ち着いた視線で客席をひと巡りさせ、軽くうなずいて会釈する。

メインテーブルには藤井父と藤井母。藤井母はすでに目元が赤く、ハンカチでそっと涙を押さえていた。藤井父が彼女の手の甲を軽く叩き、落ち着けというように合図する。

ふたりがステージ中央へ進むと、司会が婚約の誓いの言葉を読み上げ始めた。

藤井愛美は酒井蒼真を横目に見上げる。瞳には愛情と、隠しきれない得意げな光。待ち続けたのだ。藤井家に「戻され...

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