第53章 脅威

「どうしてあいつが、お父さんのことを知ってるんだ」

 酒井蒼真は声を極限まで落として言った。

 藤井心海は小さく首を振る。頭の中では、考えが目まぐるしく駆け巡っていた。

 ――アドリアン?

 彼と接点があったのは実験室だけだ。私的な話など、一度だってしたことはない。

 けれどアドリアンは研究所の正式メンバーだ。内部システムにアクセスする権限もある。

 入職時の書類には、緊急連絡先として父の名前と病院名を記載していた。

 ……調べられたんだ。私のことを。

「ひとまず戻ろう」

 酒井蒼真が彼女の手首をつかむ。

「ここは危ない」

 藤井心海は、全身に傷を負った酒井蒼真を見た。...

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