第54章 海に沈める

廃業した自動車整備工場。

トタン屋根は赤錆に食われ、あちこちに穴が開いている。そこから漏れた陽光が床に落ち、不規則な光の斑を散らした。足元には砕けたガラスや錆びたパーツが転がり、空気には機械油と鉄錆が混ざった生臭い匂いが澱のように漂っている。

藤井心海は工場の中央に立ち、周囲を見回した。

誰もいない。

「来たよ」

空っぽの工場に向かってそう告げると、声がトタンの壁の間で反響した。

背後で、鉄の扉が閉まる音がした。

ガン、と鈍い衝撃。

心海ははっと振り向く。

スキンヘッドの男が、廃タイヤの山の陰から姿を現した。後ろには手下が二人。長身の男は鼻筋に絆創膏、小柄な男は歩き方がわず...

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