第一百零五章 小泉敏江

扉が閉まった音が、想像より軽かった。

余震はすぐには散らなかった。

紗奈は動かなかった。枕に寄りかかったままの姿勢で、指がいつの間にか腿の上の薄い毛布の端を掴んでいた。握って、放して、また握った。窓の外の東京の空の色が暖かな金色から鉛の灰色へ沈んでいき、病室内の白熱灯が自動で灯り、極めて微かな唸り声を発した。


西園寺さんが病院の回転扉を出た瞬間、冷気が顔に吹きつけた。

立ち止まった。

回転扉の外で、携帯の画面を灯したまま、その場に立って、冷風に顔を三秒間晒した。

メモ帳を開いて、紗奈が先ほど言った言葉を一語一語書き留めた。

書きながら、指が止まった。

傷ついたからでは...

ログインして続きを読む