第5章

火曜日の午前十時。図書館はあまりに静かで、聞こえるのは空調の低い唸り声だけだった。昨日届いた新刊の整理をしていると、電話が鳴った。

「森崎月さん? 青峰市立図書館協会の沙羅です」

心臓が跳ね上がった。先月、図書館功労賞に応募はしたけれど、まさか本当に何かが起こるなんて思ってもみなかった。

「はい、月です」

「おめでとうございます! 今年の優秀図書館員賞は、あなたに決まりました。これは、地域図書館サービスとIT化推進への多大なる貢献が評価されたものです」

「授賞式は今週金曜の夜七時から、市民会館で行われます。ご家族やお知り合いの方も、ぜひお誘いの上ご出席ください」

電...

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