第55章 不可逆

「それに……それに、岩崎さんのほうももう麻酔に入ってます。ここで止めたら、岩崎さんも死にます!」

阿部岳斗の大柄な身体が、ぐらりと揺れた。

引き返せない。

自分の手で美玲を崖っぷちへ追い込み――いまさら悔やむ余地すら、残っていなかった。

「なら、助けろ!」

阿部岳斗は医師の喉元をつかみ、床から丸ごと吊り上げる。

「いちばんいい薬を使え! アドレナリンを打て! 最高グレードの機械を回せ!」

「もし死なせたら――この役立たずどもも、その家族も、全員まとめて道連れだ」

恐怖も絶望も、すべてを怒号に変えて叩きつける。理性の箍など、とっくに外れていた。

医師は白目をむき、必死に何度も...

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