第57章 彼女が死ぬ前に誰の名を呼んだか当ててみろ

3時間。

阿部岳斗は、廊下にきっかり3時間立ち尽くしていた。

腰を下ろしもしない。水も飲まない。指一本、動かさない。

手術室の前に、ただ真っ直ぐ立つ。その姿は、冷えきった彫像そのものだった。

やがて、手術室の扉が開く。

主治医が疲れ切った足取りで出てきて、マスクを外した。顔じゅうに汗がにじんでいる。

「阿部さん、岩崎さんの角膜移植手術ですが……成功しました」

阿部岳斗の強張っていた肩が、わずかに緩む。

「春菜の目は見えるようになるのか」

「はい」医師は頷いた。「術後の経過が良好なら、視力は正常に近い水準まで戻る見込みです」

阿部岳斗は一度、目を閉じた。深く息を吐く。

そ...

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