第100章

古川朱那は彼の目をじっと見据え、ほんのわずかな揺らぎも見逃すまいとした。

「『怖がらないで。私が連れて行くから』って……それから、『ごめん、遅くなった』って言ったよね」

一言ごとに、佐野一玄の視線がわずかに深くなる。

けれど顔には相変わらず表情らしい表情がない。ただ、水の入ったコップを握る指先が、ほんの少し強く締まっただけだった。

「そうですか」彼は淡々と言う。「熱に浮かされて……夢の中で口走っただけでしょう。古川嬢は気になさらなくていい」

古川朱那は、波ひとつ立たないその顔を見て、やはり自分の思い違いだったのだと胸の奥で結論づけた。

前世、あの声も出せない男と、最後には生き死に...

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