第105章

ああ、佐野一玄だ。

古川朱那は、ひそやかに息を吐いた。

佐野一玄が姿を消して、もう三か月以上。音沙汰はない。

「坂東補佐」

古川朱那は身を翻し、坂東真久を見た。

「佐野さん、海外では順調? だいたい、いつ頃戻れるの?」

坂東真久は表情をわずかに強ばらせ、視線を落として恭しく答える。

「古川社長。佐野さんの動向は最上位の機密にあたります。私の権限ではお伝えできません。どうかご容赦ください」

古川朱那の胸が、すとんと沈んだ。

……これは、想像以上に大きい。

出発のとき、彼の肩にはまだ治りきっていない傷があった。そのことを思い出すだけで、名もない不安がじわりと広がる。

「分か...

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