第110章

古川礼希は顔色を悪くし、茶を何杯も流し込んで、ようやく胸のつかえを押し込めた。

そのとき、スマホが鳴った。

画面に出た名前は佐野鶴。外で会いたい、話がある――そう短く告げてくる。

嫌な予感がした。だが礼希は少し考えた末、結局、約束に応じることにした。

二人が落ち合ったのは茶室だった。静謐で上品な空気が満ち、ほのかな檀香が漂っている。

佐野鶴は淡い色味のカジュアルな服装で、茶卓の向こうに座っていた。湯を通し、茶葉を洗い、淀みなく淹れていく所作は、ほとんど茶藝師そのもの。

表情は穏やかで、世間の騒ぎなどどこ吹く風――そんな落ち着きがあった。

「古川家の次男殿、どうぞ」

礼希が呆け...

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