第128章

そう言い残し、彼女は踵を返して去った。

玄関の扉が閉まる。

古川朱那はその場に立ち尽くし、固く閉ざされた扉を見つめたまま、胸の奥がじわりと重くなった。

けれど、胸にやましいものはない。

やましくないのなら――怖れることもない。

同じ頃。

帰りの車内は、息が詰まるほど重苦しかった。

音無柔は柔らかなシートに身を沈め、目を閉じたまま、顔一面に氷のような冷気を張りつけている。

車内の反対側に座るのは、佐野鶴。

「母さん、どうだった? 古川朱那には会えた? なんて言ってた?」

佐野鶴は明るく振る舞い、軽い調子で尋ねた。

音無柔がぱっと目を開ける。次いで、佐野鶴を鋭く睨みつけた。...

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