第145章

消毒液の匂いが古川朱那の鼻腔を突き、彼女は刺されるように目を覚ました。

喉がからからで、唾を飲み込むのもつらい。

「佐野社長、あなた……」

そこまで言いかけて、言葉を自分で呑み込んだ。

男の深い瞳が、瞬きひとつせずに朱那を捉えている。まるで、心の奥まで見透かしているみたいに。

さっきの言葉も、赤く焼けた炭みたいに胸の芯をじりじりと焼いた。

一瞬、頭が真っ白になる。いつもは冷静な自分が、今だけはどうしていいか分からない。

「よく考えろ。くだらない心配で、自分の将来を曇らせるな」

佐野一玄は真っすぐ朱那を見つめたまま、両手で彼女の肩を掴む。

「俺が、おまえの将来だ」

低く、落...

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