第161章

そういうことか。

佐野一玄は、無意識に両手を重ねた。視線が、ふっと明るくなる。

そうだ。前世だって、結局は同じだった。

彼女が自分を見捨てなかったのも――いちばん苦しいとき、黙ってそばにいたからじゃないか。

「あなたが一貫して彼女に優しくしていれば、いつか必ず……心の壁は崩れますよ」

坂東真久はルームミラー越しに、一玄の表情がようやく和らいだのを見て、胸のつかえをそっと下ろした。

この二人は賢すぎる。だからこそ渦中にいると見失う。外から見れば、答えは案外単純なのに。

「行こう」

十数分後、一玄がようやく指示を出した。

息を抜く必要がある。張り詰めすぎるのは、良くない。

深...

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