第5章
悠真は好奇心に満ちた目で、自らを「兄」だと名乗る少年を見つめていた。
神谷悠太は俯き、指先を微かに震わせる。七年前に味わったものよりも、さらに強烈な喪失感が胸に込み上げてきた。
「悠太、どうして一人でここに?お父様は?あなたが一人で来たこと、あの方はご存知なの?」
美月は静かに尋ねた。
悠太は顔を上げ、その瞳に皮肉の色を浮かべる。
「父さん?あの人が気にかけているのは星辰グループのことだけですよ。俺の生死なんて、どうでもいいんです」
「北川桜さんは?」
その名を聞いた途端、悠太の顔色が変わる。幼かったとはいえ、かつて母に告げた言葉を忘れたわけではなかった。
彼はお...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


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