逆光の時空へ、母と子の救済ソナタ

逆光の時空へ、母と子の救済ソナタ

渡り雨 · 完結 · 25.2k 文字

265
トレンド
1.5k
閲覧数
142
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

七年前、重い病を患っていた安田美月は、謎の【システム】に選ばれ、異世界へと旅立った。課せられた任務は、神谷亮という男性を「攻略」すること。彼との間に一人の息子を授かるも、任務は失敗に終わり、彼女は現実世界へと帰還。そして、現在の夫と巡り会った。

しかし今、平穏な日々は突如として終わりを告げる。【システム】が「異世界の息子、神谷悠太の黒化値が臨界点に達しつつある」という警告と共に、転送プログラムを再起動させたのだ。美月は、現実世界の幼い息子を連れて、崩壊した運命の軌道へと再び足を踏み入れることを余儀なくされる。

銀座の高級マンションの一室。十三歳になった天才ピアニストは、母の古い写真を金庫にしまい込む。だが、深夜になると決まって、『Mother's Lullaby』と名付けられた暗号化された音源を、独り繰り返し再生していた。

桜舞う駅のホームで、二つの世界の影が重なり合う瞬間。美月は二枚の写真を手に、選択を迫られていた。――左手には、無条件に自分を信じてくれる現在の夫と息子。右手には、救済を待つ、砕け散った魂。

システムの冷たい通知音が響く中、黒化値測定器の赤い光が、突如として激しく点滅し、数値を急上昇させる!

「今度は、もう逃げない」

彼女は現実の息子・悠真の首にお守りを結び、その指先は、譜面台に置かれた未完成の楽譜へと、そっと触れた。

チャプター 1

「ねぇ、お母さん。お寿司が食べたいな」

 遊園地からの帰り道。後部座席に座る幼い息子、藤井悠真がはしゃいだ声で言った。

「あら、いいわね」

 美月は微笑み、車のパワーウィンドウのスイッチに指を伸ばす。心地よい初夏の風が車内に流れ込んできた。

 丸一日遊んだせいで、家族みんな、少しだけ疲れている。けれど、五歳になる息子のきらきらと輝く瞳を見ていると、その疲れさえも愛おしく思えた。

 ──その、時だった。

 不意に、耳につけたワイヤレスイヤホンから、どこか懐かしい電子音が響く。

『美月さん、お久しぶりです』

 その声に、美月の指が凍りついた。

 相手もどこか気まずいのだろう。声色には、躊躇いが滲んでいる。

『七年前のあの任務、覚えていらっしゃいますか?』

 システム、と名乗ったそれは、緊張を隠せない声で続けた。

『任務が中断された後、神谷亮の精神状態が悪化の一途を辿っています。

 それに伴い、彼の……ひいては、あなたの息子さんでもあった神谷悠太もまた、道を踏み外しつつあるのです。そのため、緊急処理プロトコルが発動しました』

『美月さん、どうか……彼らに、会っていただけませんか?』

 ずくん、と心臓が重く沈む。封じ込めていたはずの記憶が、堰を切ったように溢れ出した。

 七年前。医師から余命三年にも満たないと宣告されたあの日、彼女の世界は音を立てて崩れ落ちた。

 絶望に打ちひしがれていた夜、〝システム〟は現れた。そして、ある小説の世界へと彼女を誘ったのだ。

『あなたの任務は、作中の悪役である神谷亮を攻略し、彼が嫉妬心から闇に堕ちるのを防ぐことです。任務を完遂すれば、あなたは無事に元の世界へ帰還し、健康な身体を手に入れることができます。あるいは、小説の世界に留まり、彼と添い遂げるという選択も可能です』

 当時の彼女にとって、それは抗いがたいほど魅力的な提案であり、人生の新たな始まりそのものだった。

 小説の世界で、美月はインディーズのミュージシャンになった。そのひたむきさと音楽の才能で、冷徹な完璧主義者である神谷亮の心を、少しずつ溶かしていった。

 天才シンガー、北川桜に振られ、失意の底にいた彼に寄り添い、支え続けた。

 そして、ある徹夜明けのレコーディングの後、二人は過ちを犯した。美月は、予期せず彼の子供を身籠もった。

『今、結婚するのは互いのキャリアにとって得策じゃない』

 当時の神谷亮は、あくまで冷静にそう告げた。

『先に子供を産んでくれ。時期が来たら、必ず関係を公表する』

 心のどこかで寂しさを感じながらも、美月はその提案を受け入れた。

 やがて、息子の神谷悠太が生まれた。その小さな男の子は、すぐに音楽に関して驚くべき才能の片鱗を見せ始める。

 一歳にして、様々な楽器の音色を正確に聴き分けた。

 三歳になる頃には、簡単なピアノ曲を弾きこなした。

 神谷家はそんな悠太を至宝のように扱い、頻繁に本家へと呼び寄せては、英才教育を施した。

 だが、悠太は成長するにつれて、傲慢な一面を見せるようになっていく。

『僕とあんな凡人たちを一緒にしないでよ。僕は天才なんだ。あいつらが僕と同じように学べるわけないじゃないか。それに、僕は将来、星辰グループを継ぐんだ。偉そうにしたって当然だろ』

 まだ六歳になったばかりの悠太は、かつてそう言い放った。

 美月は彼を厳しく叱った。そんな態度は許されない、もっと謙虚になりなさい、と。

 悠太はただ悲しそうに泣きじゃくるばかり。神谷亮が共に諭してくれることを期待したが、彼は何も言わず、ただ悠太を本家に連れ帰り、より専門的な音楽教育を受けさせるべきだと主張するだけだった。

 数ヶ月後。息子に会いたくてたまらなくなった美月は、遊園地に連れて行こうと神谷家の本家を訪れた。

 そこで彼女が見たのは──ピアノの前に座る悠太と、その傍らで彼の演奏に喝采を送る神谷亮、そして北川桜の姿だった。

 三人が織りなす光景は、まるで本当の家族であるかのように、完璧な調和を見せていた。

『桜さん、お父さんと付き合っちゃいなよ!お母さん、なんにもできないし、僕のこと叱ってばっかりなんだ』

 悠太は、無邪気で、残酷な言葉を口にした。

『お爺様もお婆様も言ってたよ。お母さんには本当の音楽の伝統なんて分かりっこないって。それに、お父さんだって、桜さんの才能のほうを認めてるじゃないか』

 息子がそんな言葉を口にしても、神谷亮はただ黙ってピアノの鍵盤を見つめるだけで、何一つ反論しなかった。

 北川桜は、くすりと悪戯っぽく笑みを漏らし、他に理由はないの?と優しく尋ねる。

『僕はただ、桜さんが好きで、お母さんが嫌いなだけ』

 その夜、美月は東京音楽区のマンションへ独りで帰った。

 窓辺に佇み、街の灯りを眺めていると、ふと、すべてがどうしようもなく無意味に思えた。

 悪役である彼を攻略し、自分を好きにさせることができると、愚かにも信じていた。だが現実は、彼が愛しているのは今も昔も物語のヒロインなのだと、冷ややかに突きつけてくる。

 自分が産んだ子供でさえ、そのヒロインに懐いてしまう始末。

 音楽の夢も、健康な身体も、もうどうでもよかった。ただ、元の世界に戻って、普通の人間になりたかった。

『この任務を放棄します。現実世界に戻してください』

 彼女はシステムにそう告げた。

『美月、これはまたとない機会です。どうかもう一度お考え直しください。たとえ彼があなたと結婚せずとも、彼が他の誰とも結ばれない限り、あなたはここに留まり、健康な身体を享受し続けられるのですよ』

『もう、決めたんです』

 美月は力なく笑った。北川桜が帰ってきたのだ。神谷亮が彼女と結婚しないわけがない。

 彼らが結ばれる日を、この世界で見届けてから去る必要などない。

『……承知いたしました。ですが、これほど困難な任務を遂行されたあなたです。追加の権限を申請できるか、確認させてください』

 システムは、なおも粘り強く彼女を気遣った。

 最終的に、システムは特例措置の許可を取り付けた。自身の任務ポイントを消費して美月のために健康な身体を〝購入〟し、彼女を小説の世界に来る前の時間軸へと帰還させたのだ。

 美月は深く感謝し、そんなことをしてシステムに影響はないのかと尋ねた。

『美月はお優しい方です。ですから、あなたもまた、優しく扱われるべきなのです。もし本当に申し訳ないとお思いでしたら、将来、もし機会がありましたら、その時はどうかお力添えを』

 それは、システムの社交辞令に過ぎなかった。本心では、二度と会うことがないよう願っていた。それが、美月が幸せに暮らしている何よりの証拠になるのだから。

 あれから、七年。

 美月は、今ではそこそこの知名度を持つ音楽プロデューサーになった。同業者である藤井大介と恋に落ちて結婚し、藤井悠真という、愛しい息子にも恵まれた。

 あの世界のことは、もう自分とは無関係なのだと、いつしか本気でそう思えるようになっていた。

 ──この瞬間まで。システムが、再び現れるまでは。

『美月』

 システムの馴染み深い声が、彼女を現実に引き戻す。

『神谷悠太が、あなたを必要としています』

 美月はスマートフォンを強く握りしめた。車窓の外を猛スピードで過ぎ去っていく景色から、目が離せない。

 心の内で、巨大な波瀾が渦を巻いていた。

 本当に、彼らに会いにいくべきなのだろうか?

最新チャプター

おすすめ 😍

空気のようだった妻が消えた日、俺の空っぽな日常が剥がれ落ちる

空気のようだった妻が消えた日、俺の空っぽな日常が剥がれ落ちる

19.3k 閲覧数 · 連載中 · わたあめ
妻の存在は、いつだって当たり前で、ただそこにあるだけのものだと思っていた。
だが、帰宅した俺を迎えたのは、もぬけの殻になったクローゼットと、机の上に置かれた離婚届だけだった。
三年間、彼女は何を思い、何に耐えていたのか。
初めて向き合った彼女の不在は、何よりも鋭く俺の心臓を抉る。
失って初めて気づく、俺を誰よりも愛していたはずのその手。
タイムリミットが迫る中、俺は彼女という「唯一の場所」を取り戻すために奔走する。
——もう遅いのか、それともこれはやり直すための罰なのか。
未熟

未熟

3.6k 閲覧数 · 連載中 · ほしの なお
結婚3周年の日、見知らぬ相手からのメッセージが私の命を救い、同時に完璧だった結婚生活を木端微塵に砕いた。夫は親友と不倫し、義母は犯罪組織を牛耳る黒幕だった。
嘘の巣窟に囚われた私は、冷徹で権力を持つ弁護士にすがり、復讐を誓う。妊娠の偽装、証拠集め――奴らをすべて破滅させてやる。
だが、私を導く謎の「見知らぬ人」はいったい誰なのか? そして、その弁護士が本当に求めているものとは――?
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

347.1k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
家族の縁を切った日、兄たちはすべてを失った

家族の縁を切った日、兄たちはすべてを失った

522.1k 閲覧数 · 連載中 · 風見リン
前の人生で両親が交通事故で亡くなった後、長兄は世間体を気にして、事故を起こした運転手の娘を家に引き取った。
公平を期すという名目のもと、兄たちは彼女からリソースを根こそぎ奪い、その尊厳を踏みにじってまで、運転手の娘を支えた。
彼女は兄たちのためにすべてを捧げたというのに、家を追い出され、無残に死んだ。

生まれ変わった今、彼女は人助けの精神などかなぐり捨てた。許さない、和解しない。あなたたちはあなたたちで固まっていればいい。私は一人、輝くだけ。

兄たちは皆、彼女がただ意地を張っているだけだと思っていた。三日もすれば泣きついて戻ってくるだろうと高を括っていたのだ。
だが三日経ち、また三日経っても彼女は戻らない。兄たちは次第に焦り始めた。

長兄:「なぜ最近、こんなに体調が悪いんだ?」――彼女がもう滋養強壮剤を届けてくれないからだ。
次兄:「会社のファイアウォールは、なぜこうも問題ばかり起こす?」――彼女がメンテナンスに来なくなったからだ。
三兄:「新薬の開発が遅々として進まないのはなぜだ?」――彼女が治験をしなくなったからだ。
四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。

兄たちは地に膝をついて許しを請うた。「戻ってきてくれ。俺たちこそが、血を分けた本当の家族じゃないか」

彼女は絶縁状を兄たちの顔に叩きつけ、冷ややかに笑った。
「車が壁にぶつかってから、ようやくハンドルを切ることを覚えたのね。株が上がってから、ようやく買うことを覚え、罪を犯して判決が下ってから、ようやく悔い改めることを覚えた。残念だけど、私は――許さない!」
追放された偽物の娘、その正体は最強でした

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

682.8k 閲覧数 · 連載中 · ゲゲゲ
「本物の娘が見つかった。お前はもう用済みだ」
あの子が現れたその日、私は『偽物の娘』として家を追い出された。
渡されたのは、わずかな小銭と地方行きの片道切符だけ。
さらに婚約者は私をゴミのように捨て、その日のうちに『本物』であるあの子にプロポーズした。

……上等じゃない。せいぜい勝った気でいればいいわ。
だって彼らは、私の【本当の顔】を何一つ知らないのだから。

名門病院が見放した命を救う『天才外科医』。
オークションで数億円の値を叩き出す『伝説の画家』。
裏社会の闘技場で無敗を誇る『影の女王』。
そして――彼らの全財産すら小銭に思えるほどの『真の巨大財閥の後継者』であることを。

今さら元婚約者が土下座で許しを請おうと、本物の娘が嫉妬で狂いそうになろうと、もう遅い。
かつて私に婚約破棄の書類を叩きつけた冷酷で傲慢なCEOでさえ、今や何かに取り憑かれたように私を追い回し、「もう一度だけチャンスをくれ」とすがりついてくる始末。

私を捨てて、自分たちの人生を『アップグレード』したつもり?
笑わせないで。最初から、圧倒的に上の存在だったのは私のほうよ。
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

47.9k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
今さら跪いても遅い

今さら跪いても遅い

11.2k 閲覧数 · 連載中 · ショコラ風味
5年間の結婚生活を壊したのが、1通の親子鑑定書だとは夢にも思わなかった。

自分が手塩にかけて育てた息子は、夫が元カノとの間に作った子供だった。さらにあり得ないことに、父子は最初からその事実を知っており、結託して彼女に隠していたのだ。

それだけではない。彼女はドアの隙間から、夫の計画を親の耳で聞いてしまう。元カノが戻ってきたら、彼女を「体面よく」会社から退職させ、財産を一切渡さずに追い出し、5000万の「補償金」で済ませようというのだ。

5000万?彼女が一人で支えてきた会社で、彼女の金と人脉を使って夫の尻拭いをしてきた結果が、たったのそれだけ?

絶望した彼女は、自分のすべてを取り戻すと誓う。

恩知らずの息子? もう愛さない。初恋に狂う夫? 彼も消え失せろ。

だが、彼女が本当に離婚して完全に去ったとき、あの父子は再び彼女に家に帰ってきてくれと泣きついてきた!
「もう一度だけチャンスをくれ」

今度の彼女は、一瞥さえくれなかった。
実の妹と私を騙した冷徹夫、失うものすら残らない地獄へようこそ

実の妹と私を騙した冷徹夫、失うものすら残らない地獄へようこそ

5.8k 閲覧数 · 連載中 · ^野田恵^
来栖琴音は、自分たちの結婚が本物の愛で結ばれていると信じて疑わなかった。

この3年間、彼女は自分のキャリアさえも犠牲にして、完璧な妻であり続けようと尽くしてきた。
――だが、そんなおとぎ話は、夫の裏切りを知った瞬間に無惨にも崩れ去る。

不倫の真相を追う彼女の前に、次々と暴かれていく歪んだ欺瞞の数々。
あろうことか実の妹との禁断の不貞、横領された会社の資産、そして琴音の社会的名声を徹底的に失墜させようとする冷酷な陰謀――。
彼は彼女の心を壊しただけではない。彼女の未来そのものを盗み取っていたのだ。

無駄にされた10年分の対価を、今度は私がすべて奪い尽くす番。
――最後に何もかもを失って絶望するのは、あなたよ。
本物令嬢の正体がばれました

本物令嬢の正体がばれました

150.2k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
新谷南は新谷家で二十年も育てられたのに、本当の娘が戻ってきた途端、あっさり家を追い出された。

デザイン部のディレクターの席? 本当の娘へ。
何千万円もの価値がある婚約話? 本当の娘へ。

会社中の人間が、彼女という「野良扱いの娘」がどう転げ落ちていくか、笑いものにしようと様子をうかがっていた。

そんなある日、世界限定二十台の高級バイクが会社の前に止まる。降りてきた不良っぽいイケメンが言った。

「妹、兄貴と一緒に帰るぞ」

新谷家の人間「……は?」

そのあとで彼らはようやく知ることになる。

彼女こそ、国内外の美術館の館長たちが面会待ちの列を作る「南先生」と呼ばれるアーティストであり、
新谷グループの全受賞特許の名義人であり、
さらに、伝説の「国家並みの資産を持つ」と噂される周防家の、本当の長女だということを。

大手財閥の若き当主は、封印していた婚約書を取り出し、薄く唇を吊り上げる。

「なるほど。俺の本当の婚約者は、君だったわけか」
舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

39.6k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
18年間、自分が実の娘でないとは知らずに生きてきた。ある日、荷物をすべて玄関の外に放り出され、街角に立ち尽くす私の前に現れたのは、噂では極貧だという「生家」から迎えに来た、見たこともない「兄」。

ところが、その兄が乗ってきたのはトラクターだった。

ガタガタと揺れるトラクターがたどり着いた先は、まるで古城のような大邸宅。そこで私は思い知る。本当の家族のもとに引き取られた私は、貧しくなるどころか、前よりずっと裕福になっていたのだ。

……だが、ちょっと待ってほしい。なぜ私には突然、婚約者というものが存在するのか。しかもその相手は、私の大学の教授だという。誰か、説明してくれないだろうか。
「田舎者」と笑われた私、実は裏社会の女帝でした ~冷徹社長に正体がバレて溺愛される~

「田舎者」と笑われた私、実は裏社会の女帝でした ~冷徹社長に正体がバレて溺愛される~

116.7k 閲覧数 · 連載中 · 68拓海
ある名家から「不吉な忌み子」として捨てられ、世間からは「ただの田舎娘」と嘲笑される少女。
しかし、その正体は……
ファッション界を牽引するカリスマであり、香水界の伝説的な始祖。
さらには裏社会と政財界の命脈を握り、大物たちが跪く「影の支配者」だった!

長きにわたる雌伏の時を経て、彼女はついに帰還する。
奪われたすべてを取り戻し、自分を蔑んだ一族や世間を足元にひれ伏させるために。

一方、彼女の前に立ちはだかるのは、商業界の帝王と呼ばれる冷徹な男。
彼は知らなかった。裏でも表でも自分を脅かす最強の宿敵が、目の前で愛らしく微笑むこの少女だということを。

互いに正体を隠したまま、幾度もの交戦を重ねる二人。
そのスリリングな攻防の中で、二人は互いの秘密と脆さを共有し、やがて敵対関係は唯一無二の愛へと変わっていく。

そして危機が訪れた時、二人はついに仮面を脱ぎ捨て、並び立って頂点へと君臨する。

「君の『仮面』はすべて剥がした。次は、その心を裸にする番だ」
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

793.1k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!