第20章

小林暁はかつて、天野夢華の弟子選びに参加したことがある。あのとき天野夢華は彼女の作品をたいそう気に入り、弟子にしようとまで口にした。――けれど当時の暁の心は、崎原時男のことしか見えていなくて、天野夢華から差し伸べられた手など、最初から掴む気もなかった。

成田七海はよく言っていた。自分が天野夢華の弟子になれたのは、作品の癖や空気が小林暁に似ていたからだ、と。

だから七海は何度も暁を「恩人」と呼び、同時に、目の前の大きすぎる未来を捨てた暁のことを「見る目がない」と笑い、呆れ、唾棄した。

当時の小林暁は気にも留めなかった。どうすれば崎原時男の心を奪えるか、それだけで頭がいっぱいだったから。

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