第22章

小林暁は、崎原時男のさっきの問いかけが自分に向けられたものだなんて、これっぽっちも思っていなかった。けれど声が近すぎて、ふと顔を向けた瞬間、ちょうど彼が前へと首を戻すところが目に入る。

――今の、「好きか?」は。

自分に、言ったのだ。

唐突すぎるその一言は、彼女があの五年間ずっと夢見てきた言葉でもあった。なのに今の小林暁は、反射的に小林ゆきへ視線を投げてしまう。

小林ゆきは冷ややかに睨み返した。整った狐のような目が、今は毒を塗った刃みたいで、背筋が粟立つ。

小林暁は一瞬だけ視線を交わし、すぐに目を引っ込めた。

「800万」

崎原時男の声は淡々としている。札を上げる所作は、コーヒ...

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