第27章
ハイヒールが床のタイルを叩く音が、遠くから近くへと迫ってくる。一定のリズムは楽器の演奏みたいで、小林暁の張り詰めた心の弦を、こつこつと容赦なく打った。
寝室のドアが押し開けられた瞬間、甘ったるい香水が先に流れ込んでくる。
小林ゆきの、あの「いつもの」匂いだ。暁は元々あの濃さが苦手だったのに、今はなおさら耐えがたい。胸元を押さえ、思わずえづいた。
えづく音に小林ゆきの身体が一瞬だけ強ばる。だが、その顔の笑みはむしろ濃くなった。
「まだ具合悪いの?」
近づいてきたゆきは、暁の青い顔など気にも留めず、ベッド脇の椅子に腰を下ろす。手にしていた保温の弁当箱を、脇へ置いた。
取っ手と容器がぶ...
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