第28章

男の声は冷淡ではあったが、陰湿さはない。小林ゆきも別に怖くはならなかった。ただ――呼び方が変わった、その一点だけで胸の奥がざわつく。

スマホを握る手に力が入る。小林ゆきは唇を舐め、泣き声に紛れさせるみたいに声を落とした。

「時男……変わったね」

女の勘に突かれたのか、崎原時男は伏せていた目をわずかに上げる。

「何が」

その問い返しが、塞いでいた傷口をこじ開けた。小林ゆきの声が再び零れる。さっきのすすり泣くような責め口じゃない。今度は甘えるような、媚びるような響きだった。

「変わった! 前は、私を一生大事にするって言ったのに」

「忘れたの? あの時、私がどうして出ていったか。お姉...

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