第37章

崎原時男の言葉に、小林暁の気持ちははっと引き締まった。男の重たい眼差しを見つめ返した瞬間、胸の奥を静かな水がすうっと流れていくような感覚があって、彼女は一瞬だけ何かを悟ったような顔をし、それからふっと笑った。

そうだ。崎原時男がいちばん嫌うのは、隠し子という存在だ。

今やM市で知らぬ者はいない。崎原グループの現会長、崎原時男は隠し子として生まれた男だと。

小林暁が崎原時男の名を初めて耳にしたのは中学時代だった。ただ、その頃の評判はまさに賛否両論だった。

頭が切れて礼儀もある、本家で育てられた子息たちにも引けを取らない――そんなふうに褒める人もいれば、腹に一物ある子だ、崎原家に長年しが...

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