第55章

男がここまで気にしてくるとは思わず、小林暁はわずかに目を見張った。反射的にうつむき、手を上げて目元を隠す。声は低く、張りつめている。

「……おじさんが見つかって、うれしすぎて」

こんな硬い声を、彼女は滅多に崎原時男の前で見せない。

だからこそ、崎原時男も一瞬だけ動きを止めた。

記憶の中のあの少女も――たしか、こんな声をしていた。

眉根を寄せ、彼は手を伸ばして小林暁の手首を引き下ろす。露わになった顔をしばらく見つめ、やがて手を離した。

「そんなことで泣く必要はない」

軽い口調。女の言い訳を、疑いもせずそのまま受け入れた声音だった。

小林暁は内心で息をつく。そっと視線を上げ、崎原...

ログインして続きを読む