第57章

小林暁にあんな目で見つめられると、崎原時男の胸もさすがにぐらりと揺れた。

こんな感覚は滅多にない。だからこそ彼は、無意識にその揺れを舌の上で転がすように味わってしまう。

ちょうどそのとき、応接室の扉が外から開いた。

小林暁は即座に気づき、するりと手を引き抜く。反射的に立ち上がって入室者を迎えようとしたが、ソファから腰が浮いた瞬間、ふと崎原時男が普段「人に会うとき」に見せる顔が脳裏をよぎった。

自分の立場なら、佐藤成川にそこまでへりくだる必要はない――。

そう思い直し、小林暁はそのままストンと腰を下ろす。

一方の崎原時男は、まだ手のひらを上に向けた姿勢のまま。掌に残った空白が、やけ...

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