第63章

崎原家の朝は、いつだって静かだ。とりわけ崎原時男が階下へ降りたあとは。

小林暁は早起きのほうではない。目を開けたときにはもう、小麦はベビーシッターに連れられて散歩に出ていた。

暁は布団を抱きしめたまま、しばらく頬をこすりつけていたが――はっとする。

自分がベッドで寝ている。

寝起きの気怠さが一気に引っ込んで、上体を起こし、きょろきょろと周囲を見回した。シーツは乱れているのに、眠った痕跡はひとりぶんだけ。

首を傾げた、そのとき。

外から、ベビーシッターの声が飛んできた。

『奥様、起きていらっしゃいますか』

その呼びかけを聞いた瞬間、考えている時間はもうないと察する。どうしてソフ...

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