19、
白川蘭視点
サロンは山の中腹にひっそりと佇んでいて、車を停めてから正門までは徒歩で5分ほど歩く必要があった。
雨は上がったのに、山あいの霧はまだ居座ったまま。石段には青苔がびっしりと張りつき、じっとり濡れていて足を取られやすい。
後藤正樹が低い声で言う。
「足元、気をつけろ。滑ったら洒落にならん」
林の合間に隠れるようなサロンは、視界いっぱいの緑に包まれている。品があって、肩の力がふっと抜ける感じがした。
扉をくぐった瞬間、挽きたてのコーヒーの香りがふわりと押し寄せる。深くて丸い、長く尾を引く芳醇さ。空間そのものに、心地よい余韻が染み込んでいた。
私たちは窓際のソファへ案内され...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 1、
2. 2、
3. 3、
4. 4、
5. 5、
6. 6、
7. 7、
8. 8、
9. 9、
10. 10、
11. 11、
12. 12、
13. 13、
14. 14、
15. 15、
16. 16、
17. 17、
18. 18、
19. 19、
20. 20、
21. 21、
22. 22、
23. 23、
24. 24、
25. 25、
26. 26、
27. 27、
28. 28、
29. 29、
30. 30、
31. 31、
32. 32、
33. 33、
34. 34、
35. 35、
36. 36、
37. 37、
38. 38、
39. 39、
40. 40、
41. 41、
42. 42、
43. 43、
44. 44、
45. 45、
46. 46、
47. 47、
48. 48、
49. 49、
50. 50、
51. 51、
52. 52、
53. 53、
54. 54、
55. 55、
56. 56、
57. 57、
58. 58、
59. 59、
60. 60、
縮小
拡大
