39、

白川蘭視点

私の指導教員である加賀健二先生に、個人ドキュメンタリーの撮影が入ることになった。撮影行程のうちの一か所がJ市に決まり、加賀先生は現地の大学で講演もなさるらしい。

その知らせを聞いて、私はすぐ先生に連絡を入れた。せっかくJ市までいらっしゃるのだから、お食事でもご一緒できればと思ったのだ。

けれど加賀先生は、会食はやんわりと辞退された。その代わり、私の彫刻スタジオがJ市にあるなら、ついでに仕事場を見ていこうかとおっしゃった。

その感覚は、学生時代に先生から突然、課題を抜き打ちで見られる時の緊張とそっくりだった。

気は抜けない。

私は前もってスタジオをきっちり整え、当日に備...

ログインして続きを読む