第39章

この呼び方に佐藤七海は一瞬体が硬直した。なぜか、彼の「奥さん」という言葉に心が温かくなるのを感じて……

初めてを失ったとはいえ、少なくともこの男は彼女の存在を認めている。関係を持った後に姿を消してしまうわけではない。もしかしたら、彼女は他の人たちよりも少しだけ幸せなのかもしれない……？

少なくとも母親のように悲惨ではない。佐藤七海は田中恵子が話していたことを思い出した。彼女の初めては強制されたものだったこと。古びたカラオケのボックスで、中年男性に。あの時、彼女はまだ16歳だった。

佐藤七海は本当に怖かった……田中恵子のように派手な化粧をして、毎日男たちの機嫌を取るような生活はしたくなか...