第145章 わざとだ

第1章

九条綾(くじょう・あや)は唇を噛み締め、ふと後悔の念に駆られた。

「さっき、断るべきだったかしら?」

小母(おば)さんは咳払いをして、諭すように言った。

「あの方の気持ちも分かりますよ。光(ひかり)ちゃんを無理に連れ去るのではなく、こちらに来ることを選んだのですから。綾さんのことを考えてのことじゃないですか?」

九条綾には、とてもそうは思えなかった。

「本気でそう思ってます?」

小母さんは笑顔で頷いたが、腹の底では違うことを考えていた。

下心が丸見えではないか。「酒飲み、その意は酒にあらず」だ。

「気楽に考えなさいな。ご飯を食べに来ただけで、泊まるわけじゃないんです...

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