第174章 アイを見逃す

西園寺蓮(さいおんじれん)は瞳の色を少し暗くし、長い間彼女を見つめてから口を開いた。

「本気か?」

「本気よ」

電話が繋がった瞬間、九条綾(くじょうあや)は怒りを押し殺した。

「神宮寺(じんぐうじ)さん、九条綾です」

「西園寺の奥様が、何か御用でしょうか」

九条綾に、神宮寺賢一(じんぐうじけんいち)の嘲笑が聞こえないはずがなかった。まるで、西園寺蓮がいなければ、お前になど口を利く資格さえないと言わんばかりだ。

九条綾の顔色がわずかに変わると、西園寺蓮が彼女の肩を軽く叩いた。

九条綾はようやく胸の内の怒りを抑え込んだ。

「真相もまだはっきりしていないのに、どうしてアイさんにあ...

ログインして続きを読む