第160章ザ・ボタン

三人称視点

ダミーは床に倒れ込み、全身を震わせていた。

歯はがちがちと噛み合い、冷や汗が全身をびっしょりと濡らしている。こめかみには血管がくっきりと浮き出ていた。

彼の目に映るのは、炎だけだった。

赤い炎。黒い煙。

そして、ひとりの女の顔。

彼女は泣いていた。

涙と血が入り混じり、頬を伝って流れ落ちている。

「泣くな……」

彼は荒い木の床を両手でかきむしり、痛みに耐えながらその言葉をうわ言のように漏らした。

爪が裂け、血がにじむ。

彼には、彼女が誰なのかわからなかった。

だが、その泣き顔を見るたび、胸の痛みは別のものへと変わっていく。肉体の苦痛よりも、もっと深く重い何か...

ログインして続きを読む