第174話運命のゲームのポーン

三人称視点

エマは集中治療室を出た。

廊下の突き当たりにあるナースステーションへ向かい、カウンターの上からペンを取り上げると、クラウスの次の投薬スケジュールに目を通した。抗生剤の投与量を確認し、細部を照合してから、書類のいちばん下に署名する。ペンを置いたその瞬間、黒いスーツの男がすっと隣に現れた。

男はおよそ半メートルほど離れたところで足を止め、礼節をわきまえた距離を保つ。

「エマ様」声は低い。「雇い主がお目にかかりたいとのことです。階下の面会ラウンジでお待ちです」

エマは男のジャケットの襟元に視線を走らせた。どこにも群れの徽章はない。

「あなたは?」とエマは尋ねた。

「ムーン...

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