第204話白狼は目覚める

三人称視点

その言葉が彼の口を離れた瞬間、エマはぴたりと動きを止めた。

彼女は地面に膝をつき、両手をなおも彼の肩に添えていた。

そして、彼を見つめた。

それは、記憶を失ったクラウスが口にできるはずのない言葉だった。

ここ数日、彼は本能と匂いだけを頼りに彼女を認識していた。だが、たった今彼は「君を初めて見たとき」と言った。それは本能ではない。記憶だ。

あの夜の炎だけではない。彼はそれ以前のことまで思い出し始めている。

自分たちが互いにとってどんな存在だったのかを、思い出し始めているのだ。

クラウスはその場に膝をついたまま、胸から絶え間なく血を流していた。呼吸はかすかで、今にも途切れそう...

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