第37話ナンシーの嘘

クラウス視点

俺は椅子に腰を下ろし、火をつけていない葉巻を指のあいだに挟んでいた。

目の前の長いテーブルには、五百万ドルで買ったあの絵が置かれている。熱で傷んだ絵の具のチューブが何本も、その横に転がっていた。

鑑定士は白い手袋をはめ、精密な分光分析装置を操作している。

時間だけが、やけにのろのろと進んだ。

「結果は出たのか?」俺は訊いた。

鑑定士は背筋を伸ばし、防護ゴーグルを外した。

刷りたての分析報告書を掲げ、指先で赤い数値の一行を示す。

「絵の表面から採取した白色顔料を分光分析し、お客様がお持ちになった損傷チューブの試料と比較しました」

鑑定士は断言す...

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